代替肉を巡る特許の争い(Impossible Foods vs Motif)

1年半ほど前に、Impossible Foodsが競合他社Motifを訴えた特許侵害訴訟に関連して、MotifはアメリカのIPRという制度を用いてImpossible Foodsの特許をつぶしにかかっており、そのIPRの帰趨について調べたところ、IPRの開始要件が否定されたということで、あっけなく申立が却下されていたと思っていたのですが、確かに申立のあった7件のIPRのうち6件は申立却下となっていたのですが、残り1件については申立が認められ、2023.6.16にIPRが開始されていたことが分かりました(IPR2023-00206)。

https://developer.uspto.gov/ptab-web/#/search/documents?proceedingNumber=IPR2023-00206

Motifの申立が認められた、IPRの対象となるImpossible Foods社の特許はこちらです(US特許9943096号、以下、’096特許)。

US9943096B2 – Methods and compositions for affecting the flavor and aroma profile of consumables – Google Patents This document relates to food products containing highl patents.google.com

2017年1月4日に出願され、2018年4月17日に特許となった、「消耗品の風味と香りのプロファイルに影響を与えるための方法と組成」で、クレーム数は24となっています。

上記2023.6.16のIPR申立が認められた書類において、個人的に興味深かった論点を一つあげると、’096特許については複数先行する特許出願について優先権主張がされており、今回IPR申立がされた特許クレームの優先権については、US13/941,211(2013.7.12出願)を基準に、判断をされることが記載されていました。

いつの時点の優先権主張が認められるかの議論は結構大切で、なぜならIPRで主張できる特許無効の要件とは、新規性または自明性であり、その新規性又は自明性を否定するための根拠にできるもの(先行文献)は、先行特許出願または印刷された書面に限られているからです。
特許権者側としては優先権主張の起点を過去に遡れればのぼれるほど、申立者側が新規性又は自明性を否定するために古い先行特許出願や印刷された書面を探してこなくてはならなくなり、申立者側の主張を難しくすることができます。

なお、IPRにおいては申立が認められてから原則1年以内に審理終了とすることが義務付けられており、今後本件についての帰趨を引き続きウオッチングしていきたいと思います。

また、ヨーロッパではImpossible Foods社の特許が異議申立により取消となっています。

本件に関しては過去に記事にまとめており、ご興味がございましたら下記私のnoteまたはブログ記事からご覧いただければと思います。

代替肉を巡る特許の争い

代替肉を巡る特許の争い -その後

※noteコンテンツの英語版はこちらからご覧いただけます。

Patent dispute over meat substitutes

Patent dispute over meat substitutes subsequently