代替脂肪関連企業の特許状況

年明けに投稿をした、マイコプロテイン関連企業の特許状況の時に紹介をさせていただいたFoovoさんのセミナーでは、代替脂肪の動向についてもお話があり、主催者の方の資料が非常によくまとまっていて(なお、セミナーアーカイブは、Foovoさんの有料会員になることで視聴ができます)、そちらも参考にさせていただきながら、まずは技術別に(発酵由来、細胞培養、植物由来,CO2由来)、いくつかの企業の特許をピックアップしてみたいと思います。

はじめに、代替脂肪についても、代替肉などの代替タンパク質と同様、技術別のカテゴリーとして、精密発酵や細胞培養由来のもの、植物由来のもの、そしてCO2利用など、空気由来のものに大別されるとのことです。


また、代替脂肪が注目をされている背景として、油糧作物による熱帯雨林破壊などの環境的視点のほかに、植物由来の肉や乳製品への不満として、あまり美味しくないというのがあり、美味しさの追及に必要な構成成分として、代替脂肪が注目されているとのことです。

*発酵由来

最初に、遺伝子組換え酵母などを用いた精密発酵を利用した、代替脂肪の開発について、セミナーでピックアップされていた、以下の企業の特許状況を見てみました。

オーストラリア発の精密発酵による代替脂肪の開発企業。乳脂肪の開発も手掛けているとのこと。

フアミリー単位で8出願、件数は21出願あり。
主な出願国:アメリカ、カナダ、オーストラリア、欧州、韓国
「肉のような香りを生成するための組成物および方法」「香りを生成するための組成物と方法」「肉のような香りを持つ食品を製造するための組成物および方法」「微生物における飽和脂肪の生成」「微生物におけるリン脂質の生産とその利用」「短鎖脂肪酸の生産」について出願をしている。

イギリス発の脱パーム油に特化した精密発酵企業。
独自の CLEANOilCell™ テクノロジー プラットフォームについては、以下の通り。

Clean Food Group 独自の CLEANOilCell™ テクノロジー プラットフォームは、実証済みで拡張性のある非遺伝子組み換え酵母株と食品廃棄物を食料源として使用し、従来の油脂原料に代わる持続可能な代替品を提供します。 この堅牢な技術プラットフォームは、独自の油性酵母菌株と発酵プロセスの開発に関する 10 年間にわたる先駆的な研究の結果として開発され、750 万ポンドを超える英国政府の資金に基づいて構築されました。(Google翻訳)

https://cleanfood.group/technology

Metshnikowia pulcherrima株の酵母について、英国にて出願をしている。

オランダ発の、食品廃棄物を利用し、精密発酵技術も用いることで代替パーム油開発に取り組む企業。

2023年8月29日に、「酵母によるバイオマスの発酵による油組成物の提供」について出願をしている。

WO2024054110A1 – Providing an oil composition through fermentation of biomass with a yeast – Google Patents The invention provides a method for producing an oil co patents.google.com

アメリカ発の、精密発酵技術による代替パーム油開発に取り組む企業。
Palmless™ という持続可能なパーム代替品のプラットフォームによるブランドを展開している。

フアミリー単位で9出願、件数は29出願あり。
主な出願国:欧州、アメリカ、韓国、チリ、コロンビア、ブラジル、メキシコ、イスラエル、オーストラリア、カナダ
「微生物油」「微生物によって生産されたパーム油代替品」「微生物によって生成された油およびその誘導体を含むホームケア組成物」「微生物が生成したオイルを含むパーソナルケア組成物」「食用微生物油」「酵母から生物産物を抽出するための酵素溶解」「微生物によって生産されたパーム油の誘導体」「発酵後の産業廃棄物を原料とした微生物脂質の生産」「脂質の生産方法」について出願をしている。

*細胞培養

続いて、脂肪細胞を培養することにより、培養牛脂や、豚の脂肪、乳脂肪、魚の脂肪などを再現する企業について、特許出願の側面から見ていきたいと思います。なお、今回の簡易的な調査では特許出願の確認できない企業が多かったため、また改めて、それらの企業の特許状況については確認をしたいと考えています。

オランダ発の培養肉開発企業。培養肉の開発と共に、培養脂肪に関する開発も進めているとのこと。

フアミリー単位で10出願、件数は48出願あり。
それらの出願の中で、

2023年5月17日に、「培養脂肪の製造のためのバイオリアクターおよび方法」について、

WO2023224484A1 – Bioreactor and method for the production of cultured fat – Google Patents A method of forming a hydrogel fibre inside a bioreacto patents.google.com

2022年7月22日に、「動物消費用の培養脂肪を生産する方法」について、

WO2023003471A1 – Method for producing cultured fat for animal consumption. – Google Patents The invention provides inter alia a method for producin patents.google.com

2022年7月22日に、「動物消費用の脂肪細胞を生産するための無血清培地」について、出願をしている。

WO2023003470A1 – Serum-free media for producing adipocytes for animal consumption. – Google Patents The invention provides inter alia a method for different patents.google.com

スイス発の培養肉開発企業。培養牛肉とともに培養牛脂の開発も手掛けている。

について、出願をしている。

*植物由来, CO2由来

最後に紹介するのは、植物性由来の成分や、CO2や電気で脂質・脂肪の開発を手掛けている企業の特許出願状況についてです。

フードテックに関わる様々な成分を開発しているアメリカ発の企業について、Foovoさんのセミナーでの情報によると、下記特許出願状況より、今後オレオゲル(ゲル化剤と、液体油脂からなる、固体脂肪のような状態)の製品化を目指していることが窺われるとのこと。

2023年1月30日に国際出願をした、「霜降り肉の類似品とその製造方法」

WO2023147546A2 – Marbled meat analog and methods of making – Google Patents Provided herein are compositions, methods, and systems patents.google.com

続いて、電気や二酸化炭素、そして水から脂肪を開発している、スエーデン発の企業の特許出願について、下記出願が確認できました。

Concept for the production of food with reduced environmental impact」について、欧州で権利化がされている。
(なお、PCT出願から中国、欧州、米国に移行がされており、米国特許出願”US2021/0324301″は、スエーデンの研究機関からこの企業に権利が譲渡されている)

欧州特許のクレーム1は、下記の通り(なお、水からどのように脂肪が生成されていくのか、EP特許の図3のフローチャートに分かりやすく描かれている)。

The use of water and carbon dioxide in a process for the production of edible organic substances, characterized in that said process comprises the steps of
– electrolysis of water to produce hydrogen and oxygen,
– capture or recovery of carbon dioxide,
– conversion of said carbon dioxide to carbon monoxide,
– subjecting said hydrogen and carbon monoxide to a Fischer-Tropsch synthesis to produce a mixture of olefins,
– optionally increasing the proportion of ethylene by coupling of methane to form ethylene, and/or converting higher olefins to form ethylene,
– isolating ethylene,
– synthesizing alpha-olefins or fatty acid alcohols from said ethylene, and
– oxidizing said alpha-olefins or fatty acid alcohols to free fatty acids with an even number of carbon atoms,
wherein the net energy input is in the form of electricity.

EP 3837236 B1

引き続き今回特許出願を確認できなかった企業の特許状況や、各企業の特許の深堀などについて、情報を発信していきたいと思います。